b 虚しさ

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「わかんないって…」 こちらも間抜けな声。 「付き合っては、いると思います。でも心は伴ってないんですよね」 …私、なに初対面のひとにこんな話してんだろ。 この人がここから出してくれるとでも思ってるのかな? 「それは植原サンが?」 「…おそらく広瀬先輩もです」 そうだ。広瀬先輩は、私が本当に好きで付き合っているわけではない。 面影を見ているんだ。 「…だよね。皐でしょ?」 皐。広瀬先輩が唯一心から好きだった女性。 私の高校の卒業生。先輩の二つ上。 両親の仕事の都合でシカゴへ行ってしまった。先輩に何の言葉もなく、突然に。 「だと思います。よく、皐先輩に似てるって、言われますし」 「俺も思った。びっくりしたんだ。広瀬が彼女の話するなんて、めずらしーって思ったら、ねえ」 .
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