俺じゃ、ネェ!

1/1
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ

俺じゃ、ネェ!

 もう一回、目が覚めた時、夕方近くだった。  「康彦、ヤスヒコ、おきなさいよ。いつまで寝とんで、この子は!」  明らかに別人の名前を叫びながら、俺を揺さぶる、この女はなんだ。 「ナ、ナニをするんじゃあ!おきてるぞ!」 「良かったぁ、死んだかおもたわ。はよ、降りてご飯の時間で、降りてきなさいよ。」  ナニをこの女は言ってんだ?  わからぬうちに、三十代半ばくらいの、その女は部屋を出て行った。  ヤスヒコだと?  誰だ?  俺か?  考えても、わからないのでベッドから起き上がり、部屋を見回した。  鏡が、机の上にあった。  今度は、目眩も意識を失う事もなかった。  用心しながら、立ち上がり、鏡の前まで歩いて行った。 「ウン?誰?オレ?ま、さ、か、」  鏡の向こうから、知らねえ小僧が覗いてる。  指をアゴにやると、相手も、なんじゃ、コリャ!  ありえねぇ~!  パニックになった。  もう一度見た。  間違いない、いれかわってる。  赤の他人だ。  50歳の俺が、いや、結論だす前に、確かめるんだ。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!