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チェルシーが部屋を出ると、龍也はティナのベッドのそばに張り付いて静かに見守っていた。
こうやって見ると子供想いな優しい少年に見えるが、魔法を扱ったとされる女の子たちと一緒にいる以上“あの対象”からは外せない。
それを思うと些か心苦しくも感じ、ミルフィのことを考えれば個人的にも躊躇したくなる感情に駆られるが、それとこれとは別問題。
そのような想いを胸に、チェルシーは龍也のそばに近づきながら話しかけていった。
「龍也君、取り込み中のところちょっと悪いけどさっきの話の続き、いいかしら?」
「分かりました」
一旦席を外してティナたちから離れたところでチェルシーは話を切り出した。
「さっきあっちの部屋で今後のことについて話すって言ったわよね。スピルの暴走の治療後の経過も念のため診ておきたいから、しばらくこの学院に滞在して欲しいんだけど、何か不都合でもあるかしら?」
「いえ、特に行かないといけない場所もないので大丈夫だと思いますけど」
「そう。何日か時間を貰うから難しいかと思ってたけど、なら話は早いわ。部屋はこっちで手配しておくから、龍也君たちにはここの生徒でない以上色々と慎んだ行動をお願いするわね。生徒の中には平民を嫌う困ったさんもいるから、鉢合わせすると面倒よ」
「は、はい。お世話になってる身なので、なるべく大人しくしてます」
『やっぱどこの世界でもそんな奴いるのねー。私嫌い』
龍也だって好きではないし、面倒事を重ねるたびにチェルシーには多大な迷惑をかけることになるのだからなるべく出会いたくないものだ。
成り行き上ここに滞在すると決まってしまったが、ただただお世話になりっぱなしだと言うのもあまり気が進まない。
そんな龍也の考えを見透かされたのか、チェルシーは端麗な笑みを浮かべて言った。
「問題も何も起こさないでくれるのが一番助かるわ。それじゃ、早速龍也君たちに貸す部屋についてだけど、確か──」
そのまま龍也はここに滞在する上での色んな注意点やらを聞かされたのだった。
そんなこんなでここ、アステイン魔法学院に滞在することが決まった龍也たち。
何も知らず流れに身を任せてたどり着いたここアステイン魔法学院の中で、背後より忍び寄る小さな影に気付くこともなく──
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