外の世界

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「はぁ……はぁ……あッ、見えた! あれだ!」  走り始めて十数分後、龍也たちの耳は完全に音ではなく“音楽”を聞き取っていた。  音楽が鳴っているということは、少なくとも近くに人がいるということ。  樹海を抜け出て村か何かを見つけたいという願いが叶いそうな今、期待に胸が躍る龍也は、ようやくその一つの願いが叶う瞬間がやってきた。  森の途切れ目、つまり樹海の出口を見つけたのだ。 「やっと、人がいるところに……」 『ほら龍也、何ボサッと突っ立ってんのよ! ヒナちゃんとティナちゃん、先行ってるわよ!』  感慨に耽る間もなく、どことなく嬉しそうなゆなの声にハッとしながら龍也は二人の後を追う。  段々と見えてくる森以外の景色が、龍也たちの心をさらに駆り立てる。  そして龍也たちはついに、樹海の中から……飛び出して行った。 「ここが、森を抜けた先……」  荒れた呼吸を整えながら、太陽の輝かしい光に照らされている辺りを見渡した。  足元には芝生のような短い若葉がつややかに新緑を表しながら、広大な大地が広がっていた。  目の前の大地は峠のように緩やかな傾斜を描きながら盛り上がっており、その向こうの方から気持ちの良い風に乗って軽快なリズムを奏でる音楽が聞こえてくる。 「あの向こうだよ。行くよ!」 「「うん!」」  はやる気持ちを抑えながら、龍也たちは緩やかな峠を登っていく。  輝く太陽に見守られ、新緑の大地に迎えられ、気持ちの良い風に背中を押されながら、龍也たちは峠へとたどり着いた。 「見えた! “町”だ!」  峠から見渡した広大な新緑の平野の先に、龍也の求めていた以上のモノが堂々と立ち並んでいた。  ここから距離はだいぶあるものの、町が逃げることなどあるはずがない。  期待が喜びと変わった今、輝かしい光を瞳に秘め、龍也たちは颯爽と駆け出していった──              
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