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「こ、こんなに人がいるなんて……」
『ちょっ、多過ぎじゃない?』
峠から見えた防壁で囲まれた町の入口付近にやってきた龍也たちは、思わず目を瞬かせていた。
町は思っていたよりもずっと大きいようで“街”や“都”と言った方がしっくりくるほどの規模である。
だとしても今、龍也の瞳に映っている光景には目を見張るものがある。
こんな街の入口付近だというのに、視界にはこれ以上入り切らないと言わんばかりの大衆がひしめいている。
静かだった樹海の中と打って変わってがやがやとうるさいくらいだ。
ヒナとティナに関してはぽかーんと口を開き、龍也の服の裾を掴みながらキョロキョロしている。
何はともあれ、龍也たちの耳に入ってくるのは何故か日本語ばかりで、ゆなが密かに思っていた言葉の壁は早くも崩れ去った。
龍也の左手にいる小動物をちらりと見ながら、龍也はおそるおそる近くの通行人に声をかけてみた。
「あ、あの……」
「ん?」
振り返ったその人物は、龍也よりも遥かに背が高く、がたいの良い筋肉質の中年男性。
きちんと整えられたあご髭は清潔感を感じさせるが、何ともこわもての男性だった。
「何か用かい?」
「あ、いえ、その……」
こういうタイプの人間と接することがない龍也にとっては、何とも話し出しづらい状況。
話しかける人を間違えた感が否めない中、ゆなの情けないと言わんばかりの声が飛ぶ。
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