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その後、何の変わり映えもなく穏やかに時は過ぎ去った。
果てしない破壊音を鳴り響かせていた空間にはいつもの静けさが舞い降り、次第に生き物たちも活動を再開させる。
巨木の森を広大な面積に渡って呑み込む限りない湖の真ん中で、二人の男女が横たわる。
時間にしてみればほんのわずかの中で、失ったものは計り切れず、得たものなどろくにない。
さらに時が過ぎ、ようやく彼女らはこの場へとたどり着いた。
「「…………」」
ミユとコニス。
ともに発する言葉が見当たらない。
二人の身にもしものことがあってからでは遅すぎる、故に危険を顧みず捜索に乗り出したミユの顔は大きく歪む。
唇を噛み締め、そっとショートソードを腰に戻しながらミユはぽつりと呟いた。
「コニスはミルフィちゃんを診てあげて、私はボク君を診るから。異常がなかったら、早めに戻ろ」
「はい……」
ミユは龍也を抱え、コニスはミルフィを抱えて、そっと静かにこの場を離れた。
二人の姿を見れば見るほど、ここでどのような出来事が繰り広げられていたのかがまざまざと思い知らされる。
何よりこうして見つめているだけでも、以前の二人を思わせる雰囲気が一切感じられないのだ。
それに龍也たちのいる場所を探していた時に見かけた、あの巨大な闇の一撃。
遥か遠くにいたミユとコニスですらその禍々しさに気付き、威力の規模に息を呑んだ。
“最上級魔法(クィントクラス)”をも凌駕したであろう闇の威力、ミユやコニスですら太刀打ち出来なかったかもしれない『闇』の絶対強者がいた中で、奇跡とも呼べる生き残りを見せた龍也とミルフィ。
あれほど『闇』に通じる者に、喪失感漂う表情を浮かべる若き二人。
闇を知る人ぞ知る、最悪の考えが頭をよぎって仕方ない。
どうか二人とも無事であるようにと願いを込めて、ミユとコニスは中級サモンに跨り、颯爽と森を駆け抜けていった。
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