帰還

3/7

17616人が本棚に入れています
本棚に追加
/841ページ
 急きょシュナイルドの森聖域を抜け、王都『リスヴェル』へと帰京する飛行船。  魔法衛士隊二班の壊滅の事実、ミユとコニスの証言、龍也とミルフィの被害状況から緊急警戒態勢が敷かれ、厳重な護衛の中飛行船は最高速度で王都を目指す。  そうした飛行船の中で、悲しみの声がとある部屋を満たしていた。  特に酷かったのは、一緒に連れて来なければこんなことにはならなかったと沈痛な面持ちを浮かべるフェイレリアと、二人きりにさせてしまった後悔に沈むエリーの二人だった。  さめざめと涙を流すフェイレリアはコニスに肩を支えられ、エリーはミルフィの手を握り締めながら俯いた表情が上がらない。   「フェイレリア姫、フェイレリア姫は何も悪くはありません。私は最善の策を打っていたと思います、どうかご自分を責めないでください」 「でも、でも……ッ」  いくら大人の中で育ち大人びていると言えども、所詮まだ子供。  ウェンリーヌ滞在中もずっと気にかけていた友人の喜ぶ顔が見たくて、無理を通してシュナイルドの森聖域へと入域させてしまった故に生んだ惨事に、幼き心に受けるショックはそう小さくはない。  金色の瞳が淡く涙で煌めく中、ベッドで眠るミルフィの手を傍らで握り締めるエリーに声がかかる。 「エリーちゃんも、そんなに自分を責めちゃダメだよ。こうなっちゃうなんて誰も分からなかったんだから」  心配そうなミユの声がエリーへと優しくかけられる。  そっと背中を擦ってあげながらエリーを見つめるミユの桃色の瞳には、何とも言えないあらゆる想いが入り混じった色が浮かぶ。  自身でも分かり過ぎているほどの気休めにもならない言葉しか言えない自分に、ミユの表情は思わず暗くなる。  そうした中、小刻みに震えるエリーの口から聞き取り切れないほど微かな声が漏れ出た。    
/841ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17616人が本棚に入れています
本棚に追加