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「ミィちゃんは、この日が来るのをずっとずっと心待ちにしてたんです。毎日毎日そわそわしてて、龍也さんの名前を聞くだけで簡単に驚いて、でもあんなに嬉しそうなミィちゃん、今まで見てきた中で一番輝いていました。だから今日は、ミィちゃんにとって素晴らしい一日になるなって思ってたのに、こんなのって……」
何より仲の良い友達の大きな喜びが目前まで迫った時に引き裂かれたという現実は、決して他人事として捉えられない。
かける言葉が見当たらず、より一層優しく背中を擦ってあげるミユの目線がふと別のベッドへと向けられた。
ミルフィの寝かされているベッドに隣接する龍也の眠るベッドと、原因不明の激痛を訴えていたヒナとティナが眠るベッド。
シェラが手厚く看病している光景を細められた瞳がぼんやりと見つめる中、ミユの瞳はゆっくりと閉じられる。
自分の無力さを噛み締めずにはいられなかった。
こうなることは誰にも分からなかった、そんなものは綺麗事を並べたただの言い訳に過ぎない。
一体自分は何なのか、王女の護衛を務める近衛隊長、護衛のエキスパートではないのかと、自問自答を繰り返す。
あと少しでも早く龍也たちの場所へと到達することが出来れば、このような結末も変えることが出来ていたのかもしれないと思うと、やるせない想いが張り裂けそうになる。
悔いても後に残るものは、行き場を失った靄のかかる想い。
皆、こうして行き場のない想いを募らせては涙を流し、顔を暗くする。
その後王都へと帰着する間、誰一人として口を開く者はいないのだった。
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