帰還

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 寒さが堪える深夜の王都に帰着した飛行船から、厳重な護衛に囲まれてアステイン王国一行が現れる。  皆が皆自身の顔に暗いものを浮かべ、連絡を受けた衛兵によって王城の中へと招かれた。  シュナイルドの森聖域に『闇』のメイジが現れたという報告は慌ただしく上層部に広がり、王城でフェイレリアの帰りを待っていた大臣たちはこぞってフェイレリアの安否を問いていた。 「私は無事ですが、友人が二名、こちらの魔法衛士隊二班が闇のメイジと接触した模様で被害は計り切れません。それと“シュシュマの宝液”についてお話があるのですが」  涙の痕がうっすらと頬に残る中、フェイレリアは特別大使としての立場を貫いて大臣たちとともに姿を消していった。  残りの一同は大きな部屋へと招かれ、龍也たちもそこへ運ばれた。  悲しみに暮れる声が聞こえることはなくなったが、悲しみという名の沈黙は想像以上に重くのしかかる。  その後、朝一番で戦艦に乗り込み出発するとなっていた予定が変更され、一時間後には王都を出発するとのこと。  あまりにも想定外な場所への『闇』のメイジの出没は時期・時間帯を考えられた上でフェイレリア姫を狙ったものと推定され、万が一のことが起きる前に早めに手を打ったと言ったところ。  深夜なのにも関わらず衛兵たちは総動員され、王城を取り囲む巨大な湖の一角に位置する軍港は慌ただしく活気付く。  落ち着く間もなく龍也たちは戦艦『ラクロア・シェトラス』号へと運ばれていき、まもなくして軍港を飛び立って行った。    
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