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短くも窮まるところを知らない長い旅を終え、彼らは再びこの地へと降り立つ。
アステイン魔法学院、世界を彷徨える少年の第一の拠り所となった小さな故郷。
青々しい芝生の薫りと、独特な古壁が醸し出す壮観な光景が彼らを迎えた。
だが、彼らの瞳にその光景は一瞬たりとも映ることはない。
暗闇を彷徨う彼らは誰かに気付かれることもなく、静かにその門をくぐり抜ける。
毎日眺めていた懐かしき光景が、彼らの横を通り過ぎていく。
思い出に刻まれた忘れられるはずもない光景が、彼らの横を通り過ぎていく。
無常の余韻を彼らに残し、最後に彼らは辿り着く。
彼らを壮絶な旅へと送り出した、あの始まりの部屋に。
柔らかな白きベッドに寝かされて、心地良い昼の日差しが彼らにそそぐ。
ひっそりと、誰にも気付かれることなく、今まで動き続けていた物語の歯車は停止する。
これ以上、この物語が歩む道は閉ざされた。
そして静かに、新たな物語の歯車は始動する。
今までの物語とはわけが違う、本当に紡がれし少年の物語。
“序章”の鐘は鳴り終わった。
真の物語が……幕を開ける──
to be conclusion...
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