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視界に入ってきたのは、暗闇の中に映る天井。
とても静かに息を吐く龍也はそっとその身体を起き上がらせた。
ゆっくりと周りを見渡す龍也の視界には、見覚えのある部屋がその姿を現した。
ここはアステイン魔法学院にあるイディアの部屋の隣に設けられた龍也たちの部屋。
その部屋の窓際に設置されたベッドに龍也は一人で寝かされていた。
「…………」
酷く静寂な部屋の中、己の手のひらを眺めながら龍也は虚ろな色をその眼に映す。
ふと気付けば龍也の着ていた服も従来の服ではなく、簡素な白い服へと変わっていた。
すぐそばに置いてあるチェストの上には龍也の元々着ていた服が丁寧に畳んで置かれ、その隣には鞘に収まった剣が壁に立てかけられている。
夜明け前の月明かりに照らされた部屋の中、龍也はおもむろにベッドから降りながら自身の服に手を向けた。
誰かが魔法をかけてくれたのか、ぼろぼろだったはずの龍也の服は新品同様に修繕されていた。
そんな服に着替え直そうと服を広げたその時、何かがひらりと宙を舞った。
「……ッ」
思わず追いかける龍也の目線。
ひらりと舞い落ちたそれに焦点が合った瞬間、龍也の表情がわずかに歪んだ。
漆黒に染められた艶めかしい輝きと気品を漂わす一本のリボン。
静かに拾い上げる龍也の瞳が寂寥たる雰囲気に包み込まれる中、龍也は着替えてそっと部屋を後にした。
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