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暗く、寒く、そして先の見えない廊下が龍也の眼前に現れる。
申し訳程度に灯る廊下の灯りがぼんやりと空間全体を照らす中、どこを目指すわけでもなく龍也はゆっくりとその場から歩き出した。
時折ふらつく姿を見せながらも、その手に握り締めたリボンは決して離すことなく龍也は静かに廊下の暗闇の中へと消えていった。
彷徨う龍也がふと足を止めた場所。
何度もお世話になってきた医務室の前に龍也はたどり着いた。
目的があってきたわけじゃない。
ただ、気付けばここにたどり着いていた。
龍也は身体の赴くままに医務室の扉へと手をかけた。
「…………」
誰もいないしんとした医務室。
懐かしい医薬品の香りが龍也を迎えた。
月明かりが大きな天窓から差し込む中、龍也は中へと進む。
その時、ふと一番奥のベッドに龍也の目が行った。
「……ッ!」
喉の奥から声が漏れ出た。
表情がわずかに歪む龍也は思わず片手に持つリボンをぎゅっと握り締める。
そのまま龍也はベッドへと横たわる人物の下へと歩み寄った。
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