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「…………」
「…………」
沈黙が二人の間に訪れる。
龍也はミルフィの様子が気にならないわけではなかったが、当のミルフィはじっと月明かりを眺めていた。
そんな姿がどこか触れがたく、結局龍也は口をつぐむ他なかった。
「……どうして、黙ってるの?」
ふと、そんな声が聞こえた。
顔は依然こちらを向いてはいないが、意識だけは龍也に向いているようだった。
「いや、“君”と話すのは初めてだからさ、何から話したらいいかなって」
ミルフィの目線が龍也へ向けられる。
「どういう意味?」
「そのまんまだよ。君が、ボクの知ってる人じゃないってのは分かってるよ」
龍也の言葉に、ミルフィの顔は微動だにしない。
いや、少女と言った方が適切かもしれない。
ゆっくりと龍也から目線を外しながら少女は小さく口を開いた。
「そんな風に言ってきたの、あなたが初めてよ」
「だろうね。君のことは多分、ボクにしか分からないはずだから」
物静かに呟く龍也のセリフに少女の唇がきゅっと閉じる。
わずかに俯く少女の髪がさらりと揺れた。
「もしかして、あなた……九砂龍也?」
震える声が吐息とともに漏れ聞こえた。
しんと静けさ漂う中、龍也が小さく口を開けた。
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