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「そうだよ」
龍也から返ってきたものは、望んだ答え。
「……あなたが」
瞳が微かに揺れ、そっとまぶたを閉じた。
「ずっと、あなたを待ってたのよ」
深い息が身体の芯から漏れ出てしまう。
ぎゅっとシーツを握る少女は口を開く。
「あなたに聞きたいことがあるの。たった一つだけ、どうしても聞きたいことが」
唇をきゅっと結ぶ少女はおもむろにベッドから降りた。
向き合うようにベッドに腰掛ける少女。
交じり合う視線の先に、互いの姿が映って見える。
吸い込まれるような深い黒色の瞳を見つめる少女は、意を決して口にした。
「“私”は一体……誰なの?」
じっと龍也を見つめる少女。
その問いに、龍也は静かに声を発した。
「君は君だよ。他の誰でもない、君自身だと思うよ」
「違う、違うわ……私が聞きたいのはそんな答えじゃない」
顔を歪めて少女は首を振った。
求めていた答えはそんなんじゃない。
そんなことを言われるために、ずっとこの人を待っていたわけじゃない。
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