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「独りの君を放っておけないからさ」
嘘偽りなどない。
再度差し出された右手が真っ直ぐ少女に伸びる。
じっと龍也を見つめていた少女の表情がふいに崩れた。
「それだけ?」
意外な言葉だった。
思わず目を瞬かせる龍也に、少女はふふっと笑った。
「本当にそんな理由なんだ。真面目な顔して言うからどんな大層なこと言うかと思ったら」
「だめ、かな?」
正直な気持ちを吐露しただけに、笑われたことに龍也の表情が不安げに揺らぐ。
少女は何だか気が吹っ切れたようにそっと手を差し出し、龍也の手を取った。
「いいえ。それで、独りでいる私を放っておけないあなたは、私をどう歓迎してくださるの?」
ちょっぴり悪戯っぽく少女は口にする。
小さく小首を傾げて返答を待つ少女に、龍也はぽつりと言った。
「ちょっと付いてきて」
繋いだ少女の手を引き、龍也は少女を立ち上がらせた。
そのまま手を引いて龍也はどこかへと移動し始める。
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