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「さて、ここに今日捕ってきた魚が五匹あるのだか、どうだいナイフ、君の肉とシェアしない?」
と、オレは提案した。するとそれに、彼女ーーナイフはこんがり焼けた肉をかじり付きながら
「そんな不味そうな魚は激しく門前払いだな」
彼女は肉を紙皿に載せてオレに差し出してくれた。ありがとうナイフ。嬉しくて涙がでるよ。好きになっちゃいそう。
嘘だけど。
「これなんの肉?」
「牛」
「入手経路は?」
「ロープとトラックとVNPを連れてゲラゲラファームからキャトッてきた」
「…………」
キャトーーキャトルミューティレーション。
日本語では強奪。
「あのねナイフ。何度も言ってるけどそういう犯罪に手を染めちゃあいけないって、何度言ったらわかるのさ?」
「私が提案したのではない。言い出しっぺはVNPだ」
「あの鉄分欠乏症野郎…」
オレのナイフに何やらせてんだあのクソ女。
「私はお前の所持品ではないぞ」
「分かってるよ嘘だもん」
「お前は私の所持品だがな」
「それは分からない」
「分かっている。冗談だ」
冗談じゃない。
冗談じゃなくてもいいけど。
でもやっぱり、もう少し命が必要だな。まだ、まだオレはそんなに負けてない。
「それにしても」ふと思いついたようにナイフは言う。
「今回もまた死んだな。正直お前は私たちの誰よりも恐ろしい。お前の敗戦技術には毎回感服するよ」
「…………」
……そんなことは、無いんだけどな。
「謙遜するなよ。私たちはお前が最恐だと認識しているし、お前自身もそう認識しているはずだ。そうだろう?《殺害不能(イビルアンデット)》」
「……その台詞は何度目だろうね、《格闘刺殺(コンバットナイフ)》」
僕の命はあといくつだろう?
地球が救われる頃には、死ねるだろうか。
そんなことを思った。
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