壱.その名は《殺戮敗者》

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「さて、ここに今日捕ってきた魚が五匹あるのだか、どうだいナイフ、君の肉とシェアしない?」 と、オレは提案した。するとそれに、彼女ーーナイフはこんがり焼けた肉をかじり付きながら 「そんな不味そうな魚は激しく門前払いだな」 彼女は肉を紙皿に載せてオレに差し出してくれた。ありがとうナイフ。嬉しくて涙がでるよ。好きになっちゃいそう。 嘘だけど。 「これなんの肉?」 「牛」 「入手経路は?」 「ロープとトラックとVNPを連れてゲラゲラファームからキャトッてきた」 「…………」 キャトーーキャトルミューティレーション。 日本語では強奪。 「あのねナイフ。何度も言ってるけどそういう犯罪に手を染めちゃあいけないって、何度言ったらわかるのさ?」 「私が提案したのではない。言い出しっぺはVNPだ」 「あの鉄分欠乏症野郎…」 オレのナイフに何やらせてんだあのクソ女。 「私はお前の所持品ではないぞ」 「分かってるよ嘘だもん」 「お前は私の所持品だがな」 「それは分からない」 「分かっている。冗談だ」 冗談じゃない。 冗談じゃなくてもいいけど。 でもやっぱり、もう少し命が必要だな。まだ、まだオレはそんなに負けてない。 「それにしても」ふと思いついたようにナイフは言う。 「今回もまた死んだな。正直お前は私たちの誰よりも恐ろしい。お前の敗戦技術には毎回感服するよ」 「…………」 ……そんなことは、無いんだけどな。 「謙遜するなよ。私たちはお前が最恐だと認識しているし、お前自身もそう認識しているはずだ。そうだろう?《殺害不能(イビルアンデット)》」 「……その台詞は何度目だろうね、《格闘刺殺(コンバットナイフ)》」 僕の命はあといくつだろう? 地球が救われる頃には、死ねるだろうか。 そんなことを思った。
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