第1部

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「裕翔のことお願いします。ひとりっ子でわがままなところもあると思いますが……」 「いやいや、うちなんかに、こんなかわいい女の子みたいな子が来てくれるなんて。ね、母さん」 鼻の下に少しひげをはやし、眼鏡をかけた、優しそうなおじさん。 この人がパパの親友の山田浩介さんだ。 今日は仕事がお休みで、これから日課のウォーキングに行くところだと話してくれた。 そして、その隣に、とても健康そうでふっくらとした女の人がニコニコと立っていた。 この人が奥さんで、山田佐紀子さん。 「しばらく、お世話になります」 僕は、ペコリと頭を下げた。 山田夫妻に笑顔を向ける。 昨日、鏡の前で練習した、とびきりの笑顔。 「こんなかわいい子がうちにいるなんて、きっとりょうがびっくりしちゃうわね」 おばさんが、言った。 自分の家の女の子より、僕のが可愛いの? と疑問。 まだ、りょうちゃんは学校らしい。 しかも、僕と同じ学校ときている。 一緒に行くべきか行かざるべきか…。 一緒に行くにしても、僕は帰宅部だからすぐ帰ってくるけど、りょうちゃんは部活をやっているみたいだし。 帰りはいつも7時近くになるんだっておじさんが言った。
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