現実という名の時間旅行

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一番先頭の数人が店の中に吸い込まれ、列が少し動いた。それに合わせて私達も少し動く。 後ろに視線を送ると、更に数人が並んでいた。 そうするうちに、おばさんが目の前まで来た。そこで足を止め、私達に顔を向ける。申し訳なさそうな顔だ。 私達の直前で食数に達したのだろう。自分の目の前で終わるなんて、運が悪いにも程がある。 私はそう思いながら、肩を落とした。 しかしおばさんの口からは、何の言葉も出てこない。その沈黙に、どうしたのかと顔を上げると、値踏みするかのような視線とぶつかった。一瞬嫌な感覚を覚える。でも、 「あんた達、何処から来たんだい?」 おばさんはそう言って、ニッコリと人懐っこい笑顔を浮かべた。その笑顔に、嫌な感じは露ほども残っていない。 きっと私の気の所為だったのだろう。 「あ、私は○○からです……「あれま、遠くから来て下さったんだねぇ」 答えている途中でおばさんが言葉を被せてくる。私は、姉が地元だという台詞は飲み込み、曖昧な笑みを浮かべた。 「本当はここまでなんだけど、次の仕込みの分を出したげましょ。内緒ですよ」 屈託ない笑顔で、周りに聞こえないように声を落としておばさんがそう言ってくれた。それを聞いた私は、かなり嬉しそうな顔をしたのだろう。隣で姉が苦笑いを浮かべている。 おばさんは私達の後ろに行くと、そこから大きな声で、 「今日はここまでー! ごめんなぁ、また今度おいでて下さいねぇ!」 その声に落胆の声が沸き上がった。 そして私達の後ろには、誰もいなくなったのだった。
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