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裏口から出ると、大きなごみ箱が幾つか並び、ホースの繋がった水道がある。そして、それらを挟んで『火喰い飯店』の裏口が見えた。
店員はそのまま『火喰い飯店』の中に戻っていく。
私と姉が戸惑っていると、あのおばさんが顔を出して、
「何してんの! 入っておいで」
と声をかけてきた。
遠慮がちに顔を覗かせると、店主らしい頑固な顔をした親父が、ラーメンを作っている。
そして辺りを漂うこの刺激臭!
涙が滲む程だが、唾液も湧いてくる。頭がくらくらした。
その匂いから、自分をどうにか引き離して頭を巡らせる。すると、勝手口のような場所からおばさんが手招きしていた。私と姉は親父さんの邪魔にならないように、素早くそちらに向かう。
おばさんに案内されるままにそこから上がると、すぐに囲炉裏が視界に入った。床は板敷きになっていて、壁はやはり煤けた感じの、味のある部屋だ。
此処をデザインした人間の、センスの良さが見て取れる。
私達は思わず感嘆の声を上げていた。
それを聞いたおばさんが、「どうしたんだい?」と聞いてきた。
私は、
「いや、すごく素敵な部屋だと思って……」
そう答えながら、それでも視線は部屋の中を彷徨わせる。だからその時、おばさんの目に暗い光が点った事には気づいてなかったのだ。
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