現実という名の時間旅行

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「まぁまぁ、ちょっとこっち来て座んなさいよ」 おばさんの明るい声に、視線を向ける。 おばさんはニコニコと人懐っこい笑顔で、囲炉裏の回りに座布団を敷いてくれていた。 「他のお客さんの手前もあるからねぇ。申し訳ないけど、ここで食べて貰っても構わないかい?」 こんな素敵な場所を貸し切らせて貰う方が申し訳ない。それに、私達よりも先に並んでたお客さんだっているのだ。 私と姉が口々にそう言うが、おばさんは、 「待ってたら遅くなるだろ? わざわざ遠くから来て下すったのに悪いよぉ」 そう、おばさん特有の押しの強さで言い、結局私達はおばさんが敷いてくれた座布団に正座するしかなかった。 ただやはり、親父さんは頑固らしく、ラーメンは激辛ラーメンしか作らないらしい。姉は困った顔をするが、またもやおばさんに押し切られ、激辛ラーメン二丁を注文する。 部屋に充満する匂いだけで唾液が湧き、喉が渇いてきていた。 ここまでして貰って、ラーメンだけでは気が引けるという事もあり、私達は一緒にアルコールも頼んだのだった。
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