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姉は、霞みのかかった瞳を私に向ける。少し前の、目覚めたばかりの私と同じ状態だろう。
まだ何も把握出来ていないのだ。
でも姉の意識がはっきりするまで待つ程の余裕は、私にはなかった。この状況を打破したいと、気ばかりが焦る。
しかし、両手は背中側で縛られ、そのロープは腰に回されている。両足のロープは足首から膝下にかけて雁字搦(がんじから)めにされているようだ。そんな、自由を奪われた身体をどうにか動かし、少しでも姉に近づこうとする。
縛(いまし)めはきつく、少しの緩みも生じない。
それでも身体をくねらせる私の姿は、まるで芋虫か、羽と手足をもがれた蝶だろう。
頬に食い込む猿轡が、強烈な臭いを発している。
それでもどうにか、姉の近くまで這い進む。膝が痛い。擦れた肌がひりひりと悲鳴を上げている。
その時になると姉の瞳にも光が戻ってきており、さらに混乱の色も映し始めていた。
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