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「……! ――!!」
遠くから声が聞こえてきた。
私は恐怖で目を見開き、姉も身体をビクリとさせる。
次に、ぎぎぃ……と何かを開く音が聞こえた。途端に、遠くから聞こえていた声が、大きく近くに聞こえてくる。
その音や声が、天井から聞こえてくるのが何故かなんて、考える余裕等ない。
声が近づいてくる。
誰かが近づいてくる。
それは悪意を含んでいる。
ただそれだけが、リアルな恐怖だった。
私の心臓が繰り出す振動が、私の身体から床に伝わり、私の耳元に還ってくる。
いや、姉の心臓の音だろうか。
私達は同じような恐怖を浮かべた互いの瞳をじっと凝視して、その何処かに救いを求めようと必死だった。
ふと、姉の湿り気を帯びた眼球に、四角く切り取られた闇が映っている事に気づく。あの音、そう、何かを開くような音が、切り取ったのだろう。
それは照明のように、上から照らされた光によって切り取られている。
余りにも大きな恐怖は心に鎖をかけ、そんな明白(あからさま)な変化に対する感覚をも、鈍らせてしまっていたのだ。
カツン、シューッ
次に響いたのは、何かを外し、スライドさせる音。
光の方に目を向けると、四角く開いた穴から梯子が降ろされていた。
ここは地下なのだ。
そして今、誰かが梯子を降りてきている。
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