時間という名の強迫観念

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彼らが戻ってくるまでに活路を見出ださないと、私達を待っているのは“死”しかない。 その為には、まずはこの縛めを解かなければ。 だけど何重にも巻かれたロープは、まるで緩む気配はない。映画なんかでは、たまたま近くにガラスがあったりするのだが、それらしいものは…………。 必死でロープを外そうと暴れながら、そんな事を考えていると、姉が視線で私に何かを訴えてきた。 私は姉が向けた視線を追いかける。そこには大きなシンクのような場所があり、大きな肉切り包丁が出しっ放しになっていた。 その刃先は黒ずんでいる。 私は、それが何に使われていたか考えないようにして、そちらに這って進み始めた。姉も一緒に這ってきている。 シンクの下までどうにか辿り着くと、身体を起こそうと奮闘する。 幸い膝が自由だったので、思っていたよりも楽に起き上がる事が出来た。 そして包丁をどうにか手に入れる事に成功する。 その瞬間、天井の穴が開かれた。 包丁に集中していた私は、天井の軋む音にまるで気づいてなかったので、心臓が飛び上がる程に驚いてしまった。 その弾みで、やっと手にしていた包丁を取り落としてしまったのだった。
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