時間という名の強迫観念

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店員にタックルを食らわす。 彼は隣のマンガ喫茶の、陰気な顔の店員だった。すごく不健康に痩せて見えたので、非力だと勝手に決め付けていたのだ。 あのパーツを入れた麻袋を、軽々と担いでいたのに……。そして私はそれを、この目で見ていた筈なのに……。 私はどれだけ短絡的で愚かなのだろう。 彼は私のタックルに、少しよろめいただけだった。逆に私の身体は、電柱にでもぶつかったのかと思える程の衝撃を受け、弾き飛ばされてしまう。 そしてそのまま、腕を凄い力で捻り上げられる。私は苦痛に、立ち上がる事すら儘(まま)ならなかった。 姉がそんな私を見て駆け寄ろうとする。しかし、血塗れになっても店員の致命傷には至らなかったらしく、血塗れの手が姉の足を掴んだ。姉は倒され、組み伏されてしまう。 私はその様子を視界に映しながら、自分の行動を後悔していた。 折角、姉が切り開いてくれた活路を、私が閉ざしてしまったのだ。私さえ、もっとよく考えて行動していたら、違う状況も有り得た筈なのに……。 その時、頭に強い衝撃を覚え、私の目の前は真っ暗になったのだった。
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