そして全ては終点に向かう

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厨房から出て来た人物は、数回出入りすると、裏口にある水道で運んできた寸胴を洗い始めた。 こちらには背中を向けている。 水の音でこちらには気づかないだろう。 それでも注意を払いながら、店内を覗き込んだ。 今、厨房には誰もいない。 客席や表通りの掃除をしているのだろう。厨房の電気は消され、客席も一カ所しか点灯していない。 二人は静かに中に入った。 目的は決まっている。 あの排水溝があった付近だ。 そちらに向かうが、闇が二人の捜しているものを隠してしまい、思うように捜索が進まない。 何処かに入り口がある筈なのに……。 そう思いながら床を這いずっていると、人の気配が近づいてくるのを感じて、二人は慌てふためく。そんな中、辺りを見回すと、少し奥まった場所に上がり口を見つける事が出来た。 靴を履いたままそこに上がる。その直後、厨房の明かりが点灯した。 その明かりが二人のいる場所にも差し込み、彼らの姿を晒そうとする。彼らは更に壁際に寄って、厨房から身を隠そうとした。 光は壁に遮られ、それ以外の場所の闇を更に深くする。 それらは、二人を嘲笑うように、部屋の隅に巣喰っているのだった。
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