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地下に降りた義弟の視界には、色々な人間の部位が、纏まりなく天井からぶら下がっているのが映る。
それらは余りに無頓着にぶら下がっていて、そこに人間性を感じる事が出来ない。
その向こうに、先に入った店員が立っていた。店員は、一繋がりの人間の形をした塊を見上げている。それは二つあり、逆さまにぶら下がっているようだった。
そして片方からは、どす黒い何かが、下に置かれたバケツに向かってぼたぼたと落ちている。
彼はぼんやりとそれを見つめていた。そこに現実を感じられなかったからだ。
そこに、もう片方から呻き声が発せられる。
その声を聞いて漸く、彼はこの不可思議で現実味のない空間から、抜け出す事が出来た。
次に、自分の前で起きている状況を理解し始める。
その二つが、自分の探している二人だという事。
片方から落ちているどす黒いものは血だという事。
更には、その血に染まった蒼白な顔が自分の妻のものだという事が、頭に染み込んできた。
それを完全に理解する前に、彼の身体は動いていた。獣のような声を発しながら、店員に向かっていく。
包丁を手に、気味の悪い笑みを浮かべていた店員は、その顔のまま振り返った。
義弟はその顔を打ち据える。予想外の出来事に、店員はその勢いに倒れてしまった。
義弟は店員の上に馬乗りになると、憤怒の表情で殴り続ける。
そのうちに店員の顔は潰れ、口からは泡を吹き始めた。義弟の拳は裂け、血が滲み始める。
だが、痛みを感じてないかのように、尚も殴り続けるのだった。
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