旅行という名の現実逃避

6/8
前へ
/36ページ
次へ
食事が終わり、リビングでテレビを付けて寛ぐ。 姉がコーヒーを淹れてくれた。コーヒーの香りに包まれて、落ち着いたひと時だ。 この時になって、漸くお義兄さんとも打ち解ける事が出来たように感じた。 テレビのチャンネルは地方局を映しているのだろう。私の見た事のないキャスターが、見知らぬ町を歩いている。 食べ物の番組らしく、色々なお店を紹介していた。 その中で、私の目を引いた店があった。 外観は、風流といえば聞こえが良いが、どちらかといえば寂れた感のある店構えだ。 火事にでもあったのかと思わせる、表明を焼いたような木目の外壁。 たまたま番組の撮影日に閉まっていたらしく、外観しか映されなかったけど、口コミで評判になった店らしい。 その名物は『激辛ラーメン』。 食べた事のある人に話を聞くと、すごく辛いんだけど、とても美味しくてクセになると言う。 私は実は激辛マニアだ。 地元の番組なので、姉は場所を知ってるのではないだろうか? 私が期待に満ちた目で姉を見ると、既に分かっていたのか、お義兄さんに場所を聞いてくれていた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加