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次の日の朝。 いつもの様に一緒に朝食を摂る。 とは言っても ご主人様のお世話が あるので、 ゆっくり椅子に座って 居られず なんや、かんやしていると 哲はもう食べ終わって 私に至っては まだ、パンを かじり始めたところだ。 パンの耳を見ながら 角を口に入れる。 そして視線だけを 動かして 斜め横の角度から 新聞を読んでいる 哲をじっと見つめた。 私の視線に 気づいたのか 新聞をそのままに 顔を私に向けた。 少し口角を上げると 「何?」 と哲は尋ねる。 「へ?やっ…  別に何もないけど?」 私は視線を泳がせる。 とても見とれていたとは 言いにくい。 哲はまだ私を見るので 少しだけ 頬が熱くなるのが 分かった。 「…。」 哲は目を細めると 「顔…。」 「?」 「赤いよ…。」 不意を突かれて ますます顔が赤くなる私。 だけど素直じゃない私は 「んな訳ないもん」と プイっと横を向いた。 ふふと 新聞をたたみながら 笑う哲。 椅子から立ち上がると 「じゃあ会社行くから」と 歩きだした。 「あ、うん。わかった。 行ってらっしゃい。」 と言いながら 私も玄関まで 小走りになりながら ついていく。 その様子を 振り返りながら 見ると 手を伸ばしてきた。 「いつまでも可愛いのな」 と、追いついた私の頭を ポンポンとする。 「じゃあね」 「うん、行ってらっしゃい」 と片手をあげると パタン と玄関のドアが閉まった。
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