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「ねえ、ねえ。 今日子んとこの柊一 今バンド活動は どうなってるの?」 「ああ…。」 ずずっとコーヒーをすする。 「柊一のバンドはさ この3月に 一回解散になったのよ。」 今日子の息子の柊一は 高校を卒業すると 服飾関係の専門学校に進学した。 バンドは高校の時から していたけれど 卒業と同時に 高校の仲間とは別に ちょっと歳の離れた人達と バンドを組み 本格的に始めたらしい。 それから専門学校生の2年間。 音楽とバイトと彼女と学業にと 忙しい日々を送った。 いよいよ専門学校も卒業と いう時に やっと在りつけた スタイリストのアシスタント。 3月の末に上京。 だが、しかし。 彼を待っていたのは 過酷なまでのレベルの差。 仕事初日の夜 「俺…。こっちでやっていく 自信ない…。」 と今日子に 電話してきたらしい。 すると。 それから 一か月もしないで ここに舞い戻ってきた。 すでに1年前から上京し 働いていた姉貴の奈津子には 「どんだけ、へ垂れなわけ?」 と、罵声を浴びさせられたのは 言うまでもない。 柊一も大変だったもんね。
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