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「なに?」 と、言いながら それを受け取り 紙を離したり近づけたりと 目を細める。 「ちょっとぉー!  老眼入っんの??」 「いやいやいやぁー」 と速攻否定するが 今日子の耳には 届いていないらしい。 「私もダメだよ。  もう、目がチカチカするし」 『も』って言われちゃってるよ。 と苦笑いする。 「まあ、見てよ!」 と言われて 紙に目を移すと 「ぽ?  イズン…ローズ?」 「そう!!」 『Poizon Rose 復活ライブ!』 とデカデカと書いてあった。 「復活ライブが再来週の  土曜の夜にあるのよぉ~」 紙を読み進めていくと 確かにそう書いてある。 「私行くんだけど、詩織も  一緒に行かない?」 「へっ?」 「へ、じゃなくて!  一緒に行かないかって  誘ってんの!!」 「…。」 「…どうなの?」 「…。」 「…。」 今日子の視線が 痛いんですけど。 「あの…さ。」 「うん。」 「行ってみたい  気もするんだけどさ…。」 「うん。」 「私みたいな、おばちゃんが  行って良いものなの?  激しく浮くんじゃないの?」 心配はそこだ。 プロでもない バンドのライブに 40代の前半とはいえ 私のような者が行っ ても良いのだろうか? 絶対若い子たちから 『誰?このおばさん』 と冷たい視線を 受けるに違いない。
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