劉邦の結婚

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 今、その沛県へと向かう一行がいる。老人1人に若い娘が2人。どうやら親子のようだが、親子水入らずで旅をしている、といった和やかな雰囲気ではない。  むしろその逆である。この一行には、ある種の悲壮感が漂っていた。  一行の先頭に立つのはまるでダルマのように丸く太った女。次いでその妹であろう大人しそうな若い娘。最後に、その2人から少し離れた後方に、ボロ雑巾の如くやせ細った爺が今にも死にそうな顔をしてついてきていた。 「嫌じゃ嫌じゃ! ワシはもう歩けん」  ボロ雑巾がその足を止めたかと思うと、前の2人に向かって、唐突に駄々をこね始めた。  先頭を歩いていた肉ダルマは、やれやれまたかというような顔をし 「お父上、もう少し辛抱なされませ。こう何度も休んでいては、町に着く前に日が暮れてしまいます」  と、少し語気を強めながら答えた。  もう1人の娘も、まるで死に損ないの小動物を見るかのような目でボロ雑巾…老人を見ている。  自分達の父親に対してとは思えない態度だが、2人がこの老人に冷たい態度をとるのにも、それなりの理由がある。
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