エピローグ いのちのうた

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 だが、生きる者は知っている。  大切なものの為に戦うのは尊いことだけど、それ以上に大切なのは争わないこと、無事に生きることなのだと。  かつて世界は焦土と化したのを、今を生きる人なら知っている。だからこそ、今を生きる自分はそうさせてはいけないのだ。 「ねぇ、そうだろ?」  語らうべき相手もいないが、その今を生きる人は呟いた。  それは自分に語らったものなのかもしれない。或いは、謳われた戦士に向けられたものなのかもしれない。はたまた、この世界のどこかにいるかもしれない他の生き残りに告げられたものなのかもしれない。  生きる者は願うのだ。  どうせならば、この世界に生きる人が自分以外にも居てくれますようにと。  どうせならば、あの歌のアンパンマンも戦うことなく、平穏無事に生きれたらと。  どうせならば、この世界が続いてくれと。  その誰かは、本人は知らぬがかつてドキンちゃんと呼ばれた祖先を持つ少女は、一面の花畑の中に寝転びながら、星々に願い続けるのだ――。              了
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