アンパンマンという肖像

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『●月〇日  あれから3日、ついに小麦が尽きた。自生していたヒエやドングリの実でパンを作る。だが栄養が足りない。病人から死んでゆく。  あのバイキンマンの爆弾が撒いた毒で死に至るまでの過程を一応書き記しておこう。いつか何かの役にたつかもしれない。  まず、火傷はドロドロに溶けたところから一向に治らない。火ぶくれが弾けると、酷い量の血と膿が流れる。  怪我をした場合は、そこがかさぶたが出来ずに腐り落ちてしまうのも珍しくはない。時には生きながらに蛆が湧く。  歯や骨は脆くなり、抜け落ち、折れる。  髪は白髪になってゆき、じきに抜ける。  髪が抜けたらもう末期だ。じきに血や痰や膿の混じったものを吐き出し、体中を蛆に喰われながら死ぬ。  地獄絵図だ。パン工場の外は地獄絵図だ。幸いにしてパン工場の中は毒に侵されていない。彼等を中にあげてはならない。ここは隔離されるべきのだ。』
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