アンパンマンという肖像

5/49
前へ
/55ページ
次へ
 絶叫?  悲鳴?  断末魔?  声と音は、いつしか僕にはただ音と音に聞こえていた。 「止めるんだ、アンパンマン!!」  毎回の決まりきった台詞。ただ違うのは呼ばれているのがバイキンマンでなく僕なこと。  声のした方をふりかえれば、カレーパンマンと食パンマンが怯えた表情でこちらをみていた。 「もう一度言う、止めてくれ、アンパンマン……」  上擦った声が、カレーパンマンの口から零れる。 「どうしてさ?」  疑問を口にしながらも、僕は殴るのは止めない。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加