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部屋の隅で毛布の上に横たわる奴に向かって、母親は「もう、おしっことか垂れ流しで……」と愚痴をこぼしていた。
しかし、そんな母親を責める資格なんて俺には無かった。
俺が近付くと無理矢理起き上がろうとするので、
「いいよ、寝てろ」と撫でてやると、尻尾をパタパタァ振った。
「お腹すいたろ?」と小さく切ったハムを口元へ運んでやるが、もう飲み込む力は残っていなかった。
父親が帰ってくる2週間を待たずに、奴は逝った。
俺も母親も仕事で留守だった。
奴は部屋の片隅で
一人ぼっちで死んでいった。
昔は嫌いではなかったが、今は犬が嫌いだ。
こんな俺に尻尾を振るな。
そんなに嬉しそうな顔するな。
もっと自分本位に生きろ。
俺には動物を飼う資格なんてない。
どんなにくやんでも、もう…奴は帰ってこない。
涙が溢れながら……
「クロ…ごめんね。ありがとう…」
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