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そうやって、どんどん候補者の数を減らしていきながら、彼女は愛子との話題に出た男ー、漆川剛志について考えていた。
愛子にはああ言ったルメリアだったが、実は彼女が漆川の告白を断った理由は全く別の物だった。
(…まさか、あんな男だったなんてね)
今はどこか蔑む様にそう言うルメリアも、彼がどういう人間かを知るまでは、彼にかなりの高得点をつけていた。
しかし、どういう人間かを知った瞬間から、その評価は地に着いたと言っても過言ではない。
無論、彼はイケメンでスポーツ万能で成績優秀、人に優しく、皆に好かれる人気者で有ることには違いはないー。
しかし、彼は非常に女にだらしなかった。
良く言えば博愛主義とでも言うのだろうか?沢山の彼女を持ち、それを相手に納得させ、気に入った人が現れれば、それもまた彼女にする。
そして、それを当たり前の様に公言した上で告白する男。
ー要するに漆川はハーレム主義者。
運命の相手にするには、あまりにも信頼の置けない男であった。
彼女は運動場の真ん中辺りでクルリと方向転換すると、校舎側から見て右端にある部室連へと向かう。
そして、部室楝の建物で日陰が出来ているコンクリートで塗装された地面に足を投げ出して座ると、自分の通学鞄を膝の上に置き、その中からタオルを取り出して、顔中から吹き出している汗を拭った。
「はぁ~、暑いわ…」
―暑さで火照った顔を鞄の中から取り出した厚紙製のファイルで扇ぎながら、彼女は汗を拭ったタオルを適当に折り畳んで鞄にしまうと、鞄の側面に着いている小さなポケットから一枚の便箋を取り出して、マジマジと見つめる。
「…そして、諦めも悪い。本当に嫌な男ね…」
そして、嫌悪感を露にした彼女はポイッと便箋を投げ捨てた。
受け止める物も無くハラリとコンクリートの床に落ちる便箋―。
その中には綺麗な文字でスラスラとこう書かれていた。
始業式の後、部室楝の裏で待ってる。
漆川 剛志
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