1.不老不死の御相手探し

10/12
前へ
/155ページ
次へ
校舎の裏側にある旧正門ー。 現在は裏口としての役割を果たしている場所だ。 そこに在る、未だに撤去されていない旧3学年下駄箱の裏に隠れた私達は、荒い息を吐きながら座り込んだ。 「ハァハァ…、ここまで来れば、もう大丈夫なハズです…」 半ば倒れる様な体制で下駄箱に寄りかかり、そう言う彼に対して、いち早く息を整えた私は呆れながらー。 「…助けて貰ってこんな事を言うのもどうかと思うけど…、よく言えたわね。あんな嘘…。バレたらどうするつもりだったの?」 ーそう、さっき彼が言っていた「先生こっちです!!」は全くの嘘。 あそこに居たのは彼1人であった。 彼は息が整ったかどうかよく解らない状態で笑みを溢し―。 「その時は…助けに入るつもりでした。こう見えてもキックボクシングしてるんですよ」 蚊も殺せぬ様な無邪気な笑みで、シュシュと手を伸ばして見せる彼に対して、私はやはり苦笑するしかなかった。 ー凄く人が良い事は解ったが、これだけは聞いておかなくてはならない。 「それにしても、どうして私が危ないって解ったの?貴方、校舎に向かってたわよね?」 私にミネラルウォーターを渡した後、彼は確かに校舎へと向かっていた。 それから漆川と話して事が起きるまで、それなりの時間が経っていたし、彼があそこに居るのは不自然だった。 私がそう言うと彼は突然、真面目な表情を作ってー。 「何か、妙な胸騒ぎがして…」 シ~ン…。 私がムッとした事に気付いた彼は、ハハハと表情を崩してー。 「いや、偶々あの不良の先輩とすれ違ったんですよ。向かってた方向が部室楝だったんで、まさかと思って着いていったら…ね」 「…そういう事だったのね」 相槌を打ちながら、男子生徒の表情を見る。 顔筋、笑顔、目、仕草ー、その何処にも嘘を吐いている様子はなかった。 そうなるともう1つ別の疑問が浮かんでくるのだが、ーその前に…。 「貴方、何で同級生に敬語使ってるの?話辛くて仕方ないんだけど…」 鞄に着いたラインの色は赤。 このラインの色は学年を表しており、今年は1年生から赤、青、緑となっていた。 学年が上がっても自分達の色は変わらない為、来年は緑、赤、青になる。 ーという理由から彼は自分と一緒の1年生。 勿論、実年齢は遥かに下だが、同級生に敬語を使われるのは違和感でしかなかった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加