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ー否、本当にどうでも良い事であった。
永遠の命を使って人々を救済しようとした事。
医者、看護婦、救護兵、形を変えて、警察、検事、岡っ引きー。
視点を変えてスパイ、趣向を変えて義賊、色々捨てて謎のヒーロー等々。
しかし、何をやった所で、最終的には不老不死が元で人間関係が破綻し、もう無理…と諦めた。
ならば、堕ちる所までトコトン堕ちてやろうと、薬、強盗、娼婦、暗殺、ヤクザにマフィア…とやれるだけやってみたものの、結局、金以外何も残らず、虚しいだけの現実ー。
その後は何をするにも気力が湧かず、昔の記憶を頼りに掘り起こした某英雄の財宝やら、某将軍の埋蔵金やらを売り払い、国の機能を金で掌握して、余りの財産で怠惰な日々を過ごしていた。
ならば、何を物憂げにする必要が有るのか?特に悩みが有る訳では無いのだろう?と思いの方も多いと思うが、そうではない。
というのも、何をするにもやる気"は"起きない彼女だったが、どうしても欲しい物があった。
そして、それが彼女の悩みだった。
「困ったものねぇ…。こんな物、残しておくから…」
柵に乗っけていた両腕の内、右腕を頬杖にして、その上に顎をのせた彼女は、もう片方の手をズボンのポケットに伸ばすと中から小さな容器を取り出す。
それはリップクリーム位の大きさの純金で出来た容器。
その容器の中身が何なのか、外から伺う事は出来ないが、態々確認せずとも容器の中身が何なのか知っている彼女は、試験管を振る様に純金の容器を振りながら、小さく溜め息を吐いた。
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