83人が本棚に入れています
本棚に追加
「不老不死の薬…ねぇ」
もう作り方さえ覚えていない不老不死の薬の残りー。
それが、この純金の容器の中身だった。
生きている物がこれを口にすれば、忽ち不老不死の力を手に入れる薬。
そんな夢の様な力を持った薬の僅かな残りである。
この薬の効能が解る前にサンプルとして小瓶に入れた物を、魔女狩りの際に持って逃げた…気がする。
ー今考えれば、何故持ってきてしまったのかと後悔してしまう。
というのも、これさえ無ければ全てを諦めて、新たに楽しい事だけを探しながら、何の悩みも抱く事無く、ただ延々と生きる事が出来るハズだった。
勿論、その生活に希望なんて物は無いが、そんな物は永遠に生きなくてはならないと知った時、殆ど捨ててしまっていた。
そういう理由から、彼女はこの不老不死の薬を捨てようとした事もあった。
しかし、海に捨てようとした時はこの薬がどの程度の量で、どれ程の効果が有るか解らない為、漏れだして、海の生物が不老不死になったら…と思って辞めてしまったし、何処かに捨てようと考えた時は、誰かに拾われたら…と思って辞めてしまったしー。
そう考えて、ルメリアは額に手を当て、頭を左右に振る。
(違う…、結局、私は諦めきれないだけ…)
ただ1人で延々と生きるだけの人生に残された唯一の希望。
彼女には、それを自ら捨てる事が出来なかったのだ。
様々な経験を得て、人を見切り、他人との接触を億劫に思う彼女が、それでも悩みながら、不老不死の薬を捨てずに学生をしている理由。
それはー、
「…私と共に永遠を生きてくれる人ー、居ないかしら?」
であった。
勿論、ただ一緒に生きてくれるだけでは駄目。
自分を永遠に裏切らない。
自分を永遠に愛してくれる。
そして、自分もまた、その人を永遠に愛せるー。
そんな運命の相手を探すという最後の希望、それが彼女を憂鬱な気分にさせていた。
最初のコメントを投稿しよう!