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1800年という長い人生ー。
その中には勿論その候補となった男は沢山居る。
しかし、永遠を望まぬ男、事実を知った瞬間裏切った男、不老不死になりたかっただけの男、理想に近かったのに薬を渡す前に死んでしまった男ー。
結局は誰も運命の人に成ること無く、彼女の前から消えていった。
その時に負った心の傷は長い年月と共に薄れ、何時しか消えていったが、出来事自体は経験として残り、彼女の理想をより高く、より叶わない物にしてしまう。
愛が、見た目が、性格が、優しさが、頭が、常識が、マナーが、年がー。
どうも理想に届かない。
その度に彼女は場所を変え、職を変え、年齢を変え、生活を変えー。
遂には"自分の見た目年齢が16、7歳ぐらいだから、相手もそのくらいの方が良いかもしれない"という考えから学生になった訳だ。
ーとはいえ、16、7歳である。
見た目が良いと思った所で、中身は所詮子供。
結局、何度も学校を変えたが、付き合う所か理想の相手に出会う事すら無かった。
(…やっぱり、学生は無理があったのかしらねぇ…)
ハフゥ…と眉を垂れ、妙齢の叔母さんの様な仕草で感慨深くそう考える彼女。
自身は推定1800歳。
10倍以上の年齢差というのは、やはり埋めがたい。
ーといえば、元も子もないが、もう少し歳を取って無くては精神的に大人というのは無理が有るだろう。
(光星学園の1年生も残り半年…、それまでに見つからなかったら、もう学生は辞めよう…)
彼女は背伸びをすると手に持っていた純金の容器をポケットにしまい、ベランダを後にする。
「…次は何の職業にしようかしら?」
そして、欠伸をしながらそう言うものの、自分の理想の人間なんて、この世にはもう居ないのでは?と彼女は思う。
そして、彼女はハァ…と大きな溜め息を吐きながら窓を閉め、カーテンを閉めた。
今日で夏休みは終わりー。
彼女の通算20回目を飾る最後の学生生活は、残り半年の期限付で幕を開けた。
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