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「…え~、学生の皆は新学期を迎えるにあたって…」
1800年という人生を得て、何もしていない日は一瞬に等しく過ぎていくというのに、何故、この校長先生の話というものは、こんなにも長く感じるのかしらー。
体育館の壇上でで生き生きと話す校長に、何の感情も籠らない瞳を向けながら、私は考えていた。
チラリと周りを見渡せば、寝ている生徒もチラホラ…永遠という時間を持つ私なら未しも、生きて100年と少しの時間しかない彼等に取っては、この時間ほど勿体無い時間は無いのかも知れない、と考えてしまう。
ー何にせよ、余程中身のある内容を話さなければ、話す方も聞く方も損をする気がした。
「…ねぇねぇ、悠希ちゃん」
そんなどうでも良いことを考えていた私の偽名を呼び、肩を突っつく指ー。
この式典中にそんな事をするのは誰なのか、振り返って確める迄も無かったが、とりあえず、私は相手の姿を横目に入れるくらいに視線を傾けた。
栗毛色のフワリとした質感を持つセミロングの髪、天真爛漫を張り付けた様な無邪気な笑顔。
そして、それが非常に良く似合う中学生と見間違う童顔と大きくクリクリとした瞳ー。
それを全て併せ持ったクラスメートは1人しか居なかった。
「愛子…、式典中に何かしら?」
稲坂愛子(いなさか あいこ)ー。
今回の学生生活に置いて、私が親友に"選んだ"女の子だ。
本来、不老不死という体質上、人との付き合いを極力避けたい私だが、集団生活をする上で人付き合いが重要な役割を果たす事くらい理解している。
他にも多々理由は有るが、特に出逢いを求める場合、1人では解らない部分の情報(例えば、他のクラスの情報等)を何らかの形で得る必要がある。
そういった場合、世間話や噂話等を仕入れる為にある程度の人付き合いが必要だ。
更に、ある程度の仲良くならないと話せない話というのも多く、それを知るためには親友という存在が必要になってくる。
そして、今回の学生生活において、その親友という"役割"に選ばれたのが彼女ー、稲坂愛子だった。
入学当初、先輩の不良にナンパされていた所を助けて以来、彼女は私にベッタリー。
元々、可愛らしく人当たりの良い愛子は友達も多く、情報を仕入れる機会が多い。
その為、私が彼女に対して彼氏が欲しいと言って以来、彼女は沢山の情報を提供してくれていた。
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