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だから、私は彼女の親友をしている。
この光星学園いる間だけの親友をー。
まさか、自分がそんな風に思われているとは思ってもいないのだろう。
愛子は此方の咎める様な視線など気にも止めず、無邪気な笑みを浮かべたまま、私の耳元に顔を寄せた。
「何かしら、じゃないよ~、悠希ちゃん。漆川先輩にコクられたって本当?」
私だけに聞こえる程の声量でそう言う彼女に、私は「ああ…」と頷いた。
光星学園3年生、漆川剛志(ななかわ ごうし)。
生徒会長とバスケ部の主将を兼任する学園1の人気者。
ハーフ特有の甘いルックス、スポーツ万能、人に優しく、成績優秀ー、という絵に描いた様な人物だが、私は苦い表情を浮かべた。
「…それは本当よ」
「わっ、本当何だね!でっ、付き合う事にしたの?」
此方の苦い表情に気付かず、もう付き合っている物だと思い込んでいる彼女は、素直に親友の吉報を喜ぶ様な表情を浮かべながら、確認の意を込めて問う。
だから、私はそれを否定する為にキッパリと答えた。
「…丁重にお断りしたわ」
私がの言葉に愛子は元から大きい目を更に大きく見開いた。
「え~!?何でっ!?」
驚いたせいか、声量が上がった事で周りのクラスメートが此方に視線を向けてきたが、その様子に教師一同が気付いた様子は無かった。
無論、教師に怒られる事など何とも思わないが、そのせいで無駄な時間を過ごす事になるのは面倒である。
とりあえず、そんな状況にならなかった事にホッと胸を撫で下ろした私は、今の状況を作った愛子に対して批難の視線をくれる。
「…声が大きいわよ、先生が気づいたらどうするの?」
私が強い口調でそう言うと愛子はしゅん…と頭を垂れー。
「…ご、ごめん。てっきり付き合ってるものだと思ってたから、凄く驚いちゃってぇ…。でも、何で断ったの~?」
余程ベストカップルだな~とでも思っていたのだろう。
彼女は申し訳なさそうに上目遣いで此方の様子を伺いながらも、そう聞いてきた。
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