565人が本棚に入れています
本棚に追加
まるで子を諭す母親の様にフィルシーは語りかける。
「世の中ね、誰も傷付かないなんて有り得ないの。誰も傷付けない人生なんて夢物語なの。それは軍人のレルト君なら分かるでしょ」
確かにそうだ。今まで勝利と引き替えに、数多くの戦友を失ってきた。
犠牲無しの幸福なんてあるはずがない。
「レルト君は女の子を異性として余り見ないから、乙女心なんて理解出来てないと思う。だからこの件で悩むのは凄く分かるよ。けど……嘘だけは絶対ダメ。これは何回でも言うよ」
フィルシーは優しい笑顔で立ち上がり、レルトの背後に立つと柔らかく抱きしめた。
「自分の気持ちを素直にぶつける。それが一番だよ。ほら、昔みたいに元気と勇気あげるから」
この抱きしめは幼い頃の2人のおまじないだった。
クヨクヨした時、悲しい時、勇気が欲しい時にこうしたものだ。
成長するにつれてしなくなったが、久しぶりにフィルシーはそれをした。
最初のコメントを投稿しよう!