序章 傷だらけの訓練人

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「イルジルタ義勇軍第305訓練部隊か……メイも貧乏くじ引いたもんね」 アイシャはそう言って同じ部隊のイルジルタ人と組み手を始めたメイトューレを見る。 この部隊の教官はいわゆる鬼軍曹だ。 イルジルタ訓練部隊では1番厳しい教官だが、いざ訓練兵が新兵として初陣に参加した時、最も戦死率が低い新兵はこの教官の部隊だ。 「でもメイもおむつ付きとは言え、もう軍人か……」 おむつ付きとは訓練兵の比喩である。 魔女の中では箒の練習機をそう読んだりもするが。 「死なない様に、しっかりと学びなさいよ」 アイシャにとって親しい者の戦死程悲しいものは無い。 まだウィング中隊に戦死者は出たことは無いが、自分が小隊長の時に部下を失った事がある。 あの時は生き残った部下の前では泣く事はしなかったが、やるせない気持ちになった事は今でも覚えている。
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