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杏里ちゃんがフンワリと笑ってあたしを見る。
「それに、ユイユイを見てるプリンスはとても優しい目をしてるんです」
「え?」
「そんなプリンスを見ていたら、なんだか復讐とか馬鹿馬鹿しく思えてきたんです。一人の女の子を、こんなに大事に出来る人なんだなって。
お姉ちゃんが最後に好きになった相手がプリンスで良かったって思えたんです」
「杏里ちゃん……」
「だからあたし、ユイユイもプリンスも大好きですよ?」
杏里ちゃんの笑顔に、あたしの目から涙がこぼれた。
稜を好きになってくれた人が、杏里ちゃんのお姉さんで良かった。
そう思って、あたしは杏里ちゃんに支えられながらずっと泣いていた。
空き教室にHRの始まりを告げるチャイムが鳴る。
ようやく落ち着いたあたしは杏里ちゃんと顔を見合わせた。
「チャイム、鳴っちゃったね」
「ユイユイと一緒に初サボりです」
二人一緒に笑い合う。
すると空き教室の扉が勢いよく開いた。
「唯!!」
「日野さん!!」
そこに立っていたのは、息を切らせた稜と雪くんだった。
口を開く前に抱きしめられるあたし。
何故か稜の手は震えていた。
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