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困り果てた顔の新くん。
あたしは稜の制服を引っ張った。
「稜」
「ん?」
「今回だけなら、別にいいんじゃないかな?」
「唯まで……」
「だって新くん、困ってるよ?」
必死で頼み込む新くん。
そんな新くんが可哀相に思えてきた。
稜が深いため息をつく。
「今回だけだからな」
その言葉に新くんの顔が明るくなった。
「マジ!?ありがとう!!撮影の日は唯ちゃんも来てくれていいから!!」
そう言って手を振りながら学校へ走る新くん。
あたしは稜に笑いかけた。
「ありがとう」
「なんで唯がお礼言うんだよ」
「だって新くん、本当に嬉しそうだったから」
あたしの言葉に稜もフンワリと笑い返してくれた。
あたしは まだ知らなかったの。
この時 あたし達を鋭い目で見ていた人に……。
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