プロローグ

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「ごめんなさい…」 女性はただ謝ることしかできなかった 私の子どもに生んでごめんなさい。守ってあげられなくてごめんなさい。 いくら謝っても足りない この子は私が生んだからこんな不幸に巻き込まれた 殺るなら私だけをやれ。この子に罪はない 「…?」 なぜ謝るのか、自分が怒るようなことはされていないのに 子どもは首を傾げる 「この中にいるぞ!」 小屋の扉を叩く音が聞こえる 二人はビクッとなり、冷や汗が額を濡らす 「くっ…」 せめて、この子だけは─── 女性は子どもの肩をつかみ、耳元でこう囁いた 「───」 「…?」 五つほどの小さな子どもに意味がわかるわけもなく首を傾げる しかし、母親はマホウを唱える 「!?」 子どもの真下にマホウの陣が描かれ、淡い光りを放つ 「おかーさん!」 子どもは狼狽える そして母親は子どもを別の場所へ 「───!」 転移した 光に包まれた子どもは、跡形もなく消しさった 転移する間際 「ごめんね」 と、母親の口がそう動いたように見えた
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