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燃えあがるアパートの側でミドリは目を覚ました。そして呟いた。
「そんな…ゴヒがウルトマランだったなんて…」
薄れかける意識の中でミドリは確かに見た。ゴヒの姿がウルトマランへと変わるのを…あれは幻ではなかったのか?気を失う直前に見た幻なのでは?その判断がつかぬままミドリは歩き始めた。
「そうだ、基地に報告しなきゃ」
通信機のスイッチを入れた。しかし液晶が赤く光るばかりで通信はできなかった。
「バッテリーは切れるはずが無いわ。故障?」
その時まだミドリは知らなかった。SSTが破壊された事を。その為に今、METの通信網と情報網が機能していないのを。そしてそれを行なったのがあの宇宙人、アユカであることを。ふらふらとミドリは歩きながら携帯電話を取り出した
「もしもし・・・ミドリです。今・・・」
結局ゴヒウデキという男はMETという仕事には向いていなかったのだ。あの事件から一週間が過ぎていた。ゴヒは、都心のベッドタウンにある、公園や河川敷に寝泊りをしていた。毎日残飯を漁り、METとの連絡は絶っていた。大きな公園の芝生。木の下でゴロゴロうとうととしていた。頭の中で、リオンがゴヒに話し掛ける。
(もういいかげん戻りましょうよ)
「戻るってどこへだよ?部屋はもう焼けちゃったし、METで戦うのはもう嫌だよ」
(そんな事言って、もし怪獣が出たらどうするんですか!?)
「うるせえ。逃げたらいいさもう俺はウルトマランとしてもMET隊員としても戦う気はないね」
(そんな、私が困ります)
「困るって、お前らがいるから宇宙から侵略者が来るんだろ?お前らでなんとかしろよ」
(私たちが守っているから地球はなんとかなってるんです)
「地球は地球人が守ればいいさ。俺はもう御免だけどな」
風は涼しく空は青かった。
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