Vol.2

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星の迷子が雲に手を引かれ、宝物でいっぱいのポケットから何かを落とした。教えようかと思ったが、どうやら、わざとのようだ。右ポケットの空気をつまみながら、こちらに目配せしている。星屑か、と思えば、火花だった。何の火花だ、と思えば、何の事は無い、私の眼だ。こんな所に有ったのか。拾い上げて、光にかざそうとしたが、光が無い。代わりに息を吹きかける。 朝。 いつの間に? 窓で白月が泣いている。硝子玉のように透き通った眼球を暫く手の中で弄んだ後、穴に嵌めた。私は三日月の涙を点眼しつつ、自身の眼窩と眼球の温度差を感じていた。
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