闇路に囚われて

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隊士のほとんどが外出しているため、屯所に残るのは璃桜と周平。 屯所警護に残った平隊士は五名。 それに井上も加わって、璃桜は少人数での一日を過ごすことになった。 璃桜の役目はただひとつ。 腹を空かせて戻ってくる隊士たちに、たらふく美味しい料理を振る舞うことだ。 璃桜は朝から漬物をつける下ごしらえをしていた。 その後は、安藤と新田の看病だ。 二人の容体は日に日に悪化していた。 安藤の身体にはたくさんの刀傷が残り、癒える気配は見受けられない。 一方の新田は、大きな傷が二つ。 傷口は醜い膿を吐き出し、璃桜はひたすらそれを拭き取っていた。 不安は募るばかりで、土方から看病を引き受けたはずの自分が、何もできないことが悔しかった。 たまに、周平が清潔な布切れを持ってくるとき、彼女はいつも必ず唇を噛み締めて安藤や新田の手を握っているのだ。
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